ノンフィクションの本を読んで久しぶりに興奮しました。


この「奇書の世界史」は、書かれた当時は自然に受け入れられたものが時代を経て「とんでも」になっている本と、逆に当時は「とんでも」だったのが現代科学の礎になってる本を紹介しています。

前者の「当時は受け入れられた本」の代表格は、この本のトップバッターを務める「魔女に与える鉄槌」です。魔女の恐ろしさを訴え、魔女を見つけ出す方法や魔女と自白させるための拷問方法などを綴ったこの本は、15,16世紀における魔女狩りを扇動する役割を大きく担いました。しかし、なぜそこまでの影響力を持ったのでしょうか。

「奇書の世界史」の面白さや凄さは、紹介する本がどういう時代背景に生まれ、どういう経緯で発行されたのかというそのストーリー性にあります。ただの「とんでも本」紹介ではないのです。この「時代背景」と「発行の経緯」が生み出した魔法に、その時代やその後の人たちが時に翻弄され、時に新たな時代を切り開いてゆく唯一無二の物語がとにかく最高に面白いのです。

「魔女に与える鉄槌」は、
1)教会から与えられたお墨付き(本当は違う本に対してだが、その本を序文として採用して全体に対するお墨付きのように見せかけた)
2)グーテンベルクによる活版印刷の出現
3)ペストの流行や天候不順(不安が蔓延し、「魔女」を犯人にする空気が醸成された)
という3つの要素が加わって大きな影響力を持ち、10万人もの犠牲者を産みました。

続いて紹介されるとんでも本の「台湾誌」は、あるイギリス人が噂や書籍で見聞した内容に自分の妄想をたっぷりと込めて書き上げた「インチキ情報誌」です。曰く「台湾の庶民は上着一枚をはだけたまま着る。尹部は金属製の覆いでのみ隠す」など無茶苦茶が書かれています。
taiwan
ですが、当時のイギリスに台湾を知る人はほとんどおらず、その荒唐無稽な内容も大いに信じられてしまったんだとか。
しかし嘘はいつかはバレるもの。その嘘を暴くのは、誰もが知る天才科学者ニュートンとその盟友ハレー、あのハレー彗星のハレーです。こんなところでそんな有名人の名前が出てくるというのも興味深いですし、それだけ影響力がある本だったという証左でもあります。

他にも、未だ解読されない暗号本「ヴォイニッチ手稿」、新渡戸稲造も寄稿した野球disり本「野球其害毒」、論文捏造は小保方さんだけじゃないぞ「フラーレンによる52Kでの超電導」、郷土史捏造マシーン「椿井文書」などなど、次々に登場するとんでも本の数々。

事程左様に「とんでも本」とそれにまつわる物語はとても面白いのですが、その逆、「当時のとんでも本」が切り開く未来の物語はある種の快感さえ感じます。特にジュール・ヴェルヌの「月世界旅行」から始まる月への挑戦は、ものすごく簡略にまとめられているにも関わらず興奮と感動を禁じ得ません。この話だけで一冊の本として読みたいくらいです。

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残念ながら今年はこれから「STAY HOME」なゴールデンウィークを迎えることになりますが、せっかくのおこもり期間に読書などどうでしょう?その時に手に取る1冊として強くオススメできる本です。


【おまけ】
先日、たまたま家族でバックトゥザフューチャーシリーズを観ました。その中でドクがジュール・ヴェルヌの本についてアツく語っているシーンがあって、これは、少年がこの本を読んで科学者を志すという、アポロ計画へのオマージュだったのかなあとか思いました。いま観ても面白いし、Amazon Primeで無料で観れますので、ゴールデンウィークにシリーズ3本一気見するのも良いかもしれません。
バック・トゥ・ザ・フューチャー (字幕版)
クローディア・ウェルズ
2013-11-26